昨年9月下旬に発足した政府の「働き方改革実現会議」が昨年9月下旬に発足し、半年が経過しようとしております。その中のテーマの一つ「同一労働同一賃金の導入」に関する動きとして、平成28年12月20日に『同一労働同一賃金ガイドライン案』が発表されました。このガイドライン案に法的拘束力はありませんが、この案を元に法制化を進めるという政府の強い意志が感じられるものでした。

1.同一労働同一賃金ガイドライン案とは 

非正規の割合が4割を超えるという現状の中、正規・非正規の待遇格差が大きいことは社会的課題とされていました。しかし現行法においては、労働契約法第20条やパートタイム労働法第8条によって「不合理」な格差を設けることは認められないが、この不合理性は裁判所によって最終的に判断される規範的概念であり、合理・不合理の判断が容易ではない場合も少なくありません。そこで、具体的にいかなる待遇差が合理・不合理であるのか判断の指針を示すために『同一労働同一賃金ガイドライン案』を作成しました。

2.同一労働同一賃金ガイドライン案の目的及び構成

  ガイドライン案は、雇用形態に関わらない均等・均衡待遇を確保し、「正社員」「パートタイム労働者」といった雇用形態による不合理な待遇差解消の実現を目指すことを目的としています。

 構成としては①前文②有期雇用労働者及びパートタイム労働者、③派遣労働者で構成され、中でも16頁中12頁が②有期雇用労働者(以下略)について基本給・手当等の項目別にそれぞれ問題となる事例、問題とならない事例を挙げています。例えば、賞与に関して貢献を無視して正社員のみに賞与を払うのは不合理あり、精皆勤手当について人事考課上欠勤についてマイナス査定を行い、処遇反映がある場合に待遇差を設ける事は合理的などといったものが示されています。

3.ガイドライン案に対する企業の対応

 冒頭で申し上げたように、このガイドライン案に法的拘束力はありません。厚生労働省のHPでも、「今回のガイドラインを守っていないことを理由に、行政指導等の対象になることはありません。」と明記されています。また、正規・非正規の待遇差だけではなく正規労働者同士の間における適用をどうするかといった問題や、同一労働同一賃金に関連する裁判が現在でも係属している現状では、最終的な法案内容の予測は困難です。そのため、今後ガイドライン案から大幅に修正される可能性は十分にありますので、現時点での会社の制度変更は時期尚早であるといえます。あくまでガイドライン案は参考として、自社の賃金項目の決定基準や待遇差の確認をするに留めることで足りますが、法整備を進めようとしている政府の動向は注視していく必要はあるでしょう。

首相官邸「働き方改革の実現」

厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」